エッセイ童話

合唱コンクール

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※本作中には実際のセミさんの写真が含まれます。

 写真の背景は加工をしている為、歪み等が含まれます。



 今年の夏、合唱コンクールが開かれます。

「わーい、わーい、わーい」

 短い命の私達、力いっぱい頑張りましょう。

 大会はチームごとに分け、音の響き、ハーモニーで競いたいと思います。

 全員参加です。よろしく。セミ事務局より。

「はーい」

大変、全員参加となると、

音程の偶に外れるおんちくん、

ガラガラ声のガラガラさんも一緒のチーム。

おんちくんはオペラさんに教えてもらえばよい、

問題はガラガラさん。

土から出てくるときに、

汚い土をおなかの中に入れてしまったらしい。

それが取れずに、

いまだにガラガラ。

「へーそうなんだ」

「大ニュース大ニュース。三チームの村さんの話なんだけど、

カマキリに襲われたとき助けてくれたティートゥリーの家の人いるでしょ。」

「うん」

「その家の人が、なんと、なんと・・・」

「何?何よ」

「何かをくれました。なんでしょう」

「何?」

「今私達に必要な物」

「分からないから早く教えて」

「蜜です」

「なんで必要なの?」

「合唱コンクールがあるでしょう」

「そうか」

「でもどうしてくれたの?」

「村さんの話では、

生まれて間もない子がティトゥリーの家の窓の網戸でバタバタしていたら、

蜜をくれたそう。

体も小さく、

弱っているのかと思ったようで、

元気が出るように蜜をくれたの」

「う~ん」

「その子は蜜を飲むと、

あまりに美味しく、

くれた人の手の方に歩いていくと、

その人はびっくりして、

蜜を窓のサンのところに落としてしまった。

すると、

その子がまたびっくりして、びっくりびっくり」

「なるほど」

「というわけで、

ティトゥリーのお家に行くと、みんな蜜を頂けます」

「みんなでいこう、ガラガラさんもつれて」

「いつ行く?」

「あしたでも」

「皆でいっぺんに行くと驚くから、

一人ずつ網戸に横に並ぶのはどう?」

「いいかも」

「練習しよう」

「お行儀よく、横に並んで、

自分の番が来るまで動かず、

隣の人が蜜を頂いているとき、手足を絶対に動かしてはいけません。

お家の人が驚いてしまうから。

かわいく、お行儀よく。

出来る人は手で”ちょうだい、ちょうだい” するのもいいわね」

「なんだ、こんな時も能力の差が・・・」

「何か特技のある人は、惜しまずに出すこと」

「はーい」

翌日、ティトゥリーのお家へ。

まず小さい子から並びました。

「あらっ、今日は団体さん?今日も蜜あげようかな」

来た来た来た・・・

「横に並ぶなんてなんてかわいいのかしら。

お話が出来たら楽しいけどね」

すると、

セミさんが両手を合わせ”ちょうだい、ちょうだい”。

また、片手を上げて手を振る真似を。

羽をパタパタするセミさんも。

お家の人は、

「すごいすごい!今あげるからね」

皆、甘い蜜をお口の中へ。

「おいしい~しあわせ~」

そんなことで合唱コンクールは、

みんな優勝だと思いました。

しかし、

合唱コンクールでは、

優勝は出来ませんでした。

優勝は三チーム。

蜜のことを教えてくれたチームです。

チームは全員蜜を頂いていました。

審査では、

響きはとても良いとのこと。

問題は、

ハーモニーの差で優勝が決まったようです。

 

セミさんたちは、

どちらにしても、

楽しくおいしかった夏のようです。

来年も合唱コンクールは開かれるそうです。

おわり

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