エッセイ童話

私の名前はクッキー ~すずめの赤ちゃん~

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私の名前はクッキー。六歳、女の子のワンちゃん。

私の住んでいるところは川越。

緑がたくさんある素敵な所で、私は大好きです。

今日も私の大好きな家族と、大好きな散歩にお出かけ。

いつも通る散歩道のガソリンスタンドを過ぎた時です。

まみちゃんが雀の赤ちゃんを見つけました。

歩道にたった一羽の雀の赤ちゃん。

皆でお母さん雀を探しました。

「お母さんどこ?お母さんどこ?赤ちゃんが泣いてるよ。」

空を見て、私はお母さん雀を探しました。

まみちゃんが、

「かわいそうだから家に連れて帰ろうよ!」

パパは、

「そんなことしたら死んでしまうよ。」

まみちゃんは、

「でも、このままだとすぐに死んでしまうよ!」

私も、

「そうだよね、まみちゃん。」

心の中で言いました。

するとママが、

「家に連れて帰ってみましょうよ。」と、

タオルのハンカチを出して赤ちゃんをそっと包み胸に抱いて、

さあお散歩の続きです。

散歩はここから四十分くらい。

みんな赤ちゃんのピヨピヨと鳴く声を気にしながらも散歩を続け、

私はいつもの様に、いつのも所でお腹をスッキリさせました。

さあ、急いで家に帰ります。

家に着くとママは、大きなザルを二つ合わせ、

ザルにタオルをしいて赤ちゃんをそっと置きました。

そうそう、家にはオカメインコのりんごちゃんがいます。

イラスト作:くりおね



りんごちゃんは、とてもかわいくて、とても甘えん坊な女の子です。

ちょっと離れた所で、赤ちゃんとりんごちゃんのご対面です。

りんごちゃんは赤ちゃんのピヨピヨと鳴く声、

そして姿も見ましたが、

あまり興味がないようです。

でも、私は気になって仕方がありません。

ザルの側によって、元気かと心配して覗いてみると、

ご飯もお水も飲んでいません。

本当に大丈夫かな・・・。

その時ママが、

「あ、そうだ。家の外に出して椅子の上に置いてみましょう。」

赤ちゃんは、

「ピヨピヨ」

さらに大きな声で、

大きな口を開けてお母さんを呼んでいるようです。

私は、

「そんなに大声を出すと声が出なくなるよ!」と、

赤ちゃんに言いました。

でも、お母さんに会いたいんだよね、

絶対に会わせてあげると思い、

私も一緒に大きな声で

「ワン!ワン!ワン!」と、

空に向かって呼びました。

しばらくすると、

空から「ピヨピヨピヨ」と、

力強い雀の声が聞こえてきました。

お母さんが来たのです。

みんなは大喜びで外に出て、

空を見上げて探しましたが見つかりません。

今度は先ほどよりも、

そして近くで声が聞こえるのです。

みんなは、

「お母さんはどこにいるんだろう。」

必死に探しましたが、姿が見えません。

時間も経ちママが、

「外に出して置くと危険だから、

 まみちゃんの部屋の出窓に置いて少し様子を見ましょう。」と言い、

「きっとお母さん雀は迎えに来るわよ。家を見つけて庭まで来たのですから。」

ママは自信満々に話しています。

私は、

赤ちゃん雀を探しに来たお母さん雀は、

凄いなぁと思いました。

後はお母さん雀が赤ちゃんの側に来ることが出来るように、

そして、ご飯も食べさせられるように、

窓は十五センチほど開けて、

また人の気配があってはそばに来ることが出来ないので、

さらにもう一枚のカーテンをつけることにしました。

赤ちゃん雀は相変わらずお腹がすいているのか、

お母さんを探しているのか、

大きな声で、

「ピヨピヨピヨ」

鳴いています。

ちょっと前に庭で聞こえたお母さん雀の声は今は聞こえません。

どうしたのだろう。

赤ちゃんはここだよ。

「ピヨピヨピヨピヨ」

今も鳴いています。

お母さんに届けとばかり今も鳴いています。

空も暗くなり、

今日はこのままで寝ることになりました。

朝早く目覚めたまみちゃんは、

カーテンをそっと覗くと・・・ビックリです。

出窓のところには、たくさんのフン。

そして、外を見るともっとびっくりです。

何本もの電線にたくさんの鳥がいます。

まみちゃんは、静かにみんなを、

そして急いで呼びに行きました。

私は何かたいへんな事があったに違いないと思って、

誰よりも先に一番で二階に上がって行きました。

そして外を見ると、

鳥が何十羽も。

雀だけではなく、

ムクドリ、そして怖いカラスまで・・・!

大変、そして赤ちゃんの姿が見つかりません。

ザルのふたをみんなで外し、

赤ちゃんを外に出したのです。

赤ちゃんはどこに行ったのだろう。

その時、

パパが窓から首を出して外を見回すと、

窓の下の屋根の端に赤ちゃんがいました。

皆はドキドキ。

怖いカラスは前の家の屋根のてっぺんで見ています。

それも、二羽も。

でもきっと大丈夫。

何十羽もの鳥が赤ちゃんを見守り電線に。


それにしても、

ムクドリはおしゃべりです。

ペチャペチャペチャペチャと何か話しています。

その声の中に、

力強いお母さん雀の

「ピヨピヨピヨ」

と鳴く声が聞こえ、

「あっお母さんだ!」

まみちゃんが、

「赤ちゃんの所へお母さんが飛んできた。」

大きな声で言いました。

お母さんが来たのです。

お母さんは赤ちゃんに何かお話している様子。

その時です。

赤ちゃん雀は屋根から下へ落ちました。

さあ大変!

電線の鳥達も、

私たちも大騒ぎ。

外でも家の中でもワサワサワサワサ。

パパが下を見て探すと、

赤ちゃんが草のたくさん生えたベットの様なところに落ちています。

これで皆もまたもや一安心。

またお母さん雀が赤ちゃんの所へ行って、

何かを話しているようで、

上ではたくさんの鳥たちがその様子をじっと見守っています。

がんばれ!がんばれ!

そのうち赤ちゃんは自力で動き出し、

少しずつ少しずつ移動しています。

私たちは二階で静かに見守り、

赤ちゃんの姿はそのうち目の届かないところへと姿を消しました。

電線の鳥たちは雀の親子の姿がまだ見えるようで動きません。

しばらくすると安心したかのようにバラバラと飛び立っていきました。

ところで、私達がじっと見守る事にしたのは、

お母さんが警戒して離れて行ってしまうことを恐れたからです。

私は、

「雀のお母さん、迎えに来てくれてありがとう。」

そしてお母さんのすごさを感じました。

また、怖いカラスさん達から赤ちゃん雀を守ってくれた、

たくさんの鳥さん達ありがとう。

あ、そうそう。

赤ちゃんは知らないと思うけど、

赤ちゃんには家に来た時から名前をつけてありました。

「つばさちゃん」です。

翼を広げ大空へ飛び立てるようにと願って。

そして今でも私の散歩の時、

雀さん達に出会うと「つばさ!」と呼ぶ時があります。

すると、こちらを見て、

頭をコクコクしているように見える時があるのです。

つばさかも。

おわり

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