エッセイ童話

トントントン 誰かいませんか

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トントントン、戸を叩く音。

どちら様でしょうかと言ってしまいそうなノック。

冷蔵庫からこんなノックされるのは初めてなので笑ってしまった。

トントントンの音は昼夜問わず毎日トントントン。

どの様なタイミングでノックされるのか冷蔵庫に話してみた。

「ねえ困るのよね!エアコンを4台買い替えたばかり。

どうにか、もう少し頑張ってほしい。

どこが悪いのかしら、それとも寿命・・・?

長い間働いてくれたから。

ともかく、もう少し、お願い頑張って!」

まずは冷蔵庫を点検。

一番下の冷凍庫2段。

しっかりと食材を石のように凍らして、偉いなあ・・・。

そして野菜室。

これもまた問題なさそう。

適度に野菜たちを冷やして鮮度を保っている。

すばらしい・・・。

しかし、その中でトントントンのリズムのせいか、

にんじん、大根の葉が成長している。

これもまたかわいい。

さあ上の冷蔵室。

ドアのパッキンはそれなりの老化。

右ドアの表面が少しはがれている・・・。

しかし、トントントンには関係は無いと思う。

庫内は電気はついているし、

冷えているし。

さて氷を作る冷凍室。

氷は10年近くこの冷蔵庫では作っていない。

ここら辺では・・・。

いくつかのボタンが並んでいる。

ボタンを押して様子を見ることに。

まずはタンクにお水を・・・。

暫くして氷をみると変な形をした氷が続々と出来た。

何回か繰り返して元々の氷の姿に!

これでトントントンは解消か…。

そんなに甘くは無かった。

トントントン

不思議なこともある。

トントントンと音がしているとき、

「そろそろお別れだね!」

と言うと、一時的にトントントンが止まる。

お別れ話を何回か繰り返すと、

トントントンの回数が少なくなった。

冷蔵庫に、

「どうしたのかな・・・

もうすこし家にいたいのかな?」

すると冷蔵庫が、

「トントントンは早く気付いてほしいから」

と言った気がする。

そこで検証。

まずは庫内を覗くと、

卵たちはトントントンが頻繁で頭が腐りそうだという。

鍋のカレー達もみんなざわざわ、トントントンで頭が混乱。

納豆は発酵がさらに進んで良いのか悪いのか。

責められるのは製氷機。

「おいしい氷を作らないからこういうことになったんじゃないの!」

「だって、水が入ってないんだから・・・。氷を作れない。」

みんなは、

「それはそうだね!」

冷蔵庫「みんな、向こうの冷蔵庫を見れば答えが・・・」

みんな「なんだろう」

冷蔵庫「向こうの冷凍庫に爆弾のような氷がいっぱい入っている。

早く言えば大きな丸氷に心変わりした様子。」

みんな「じゃあこっちも丸氷をつくればいい。」

製氷機「作れません、私には・・・小さい四角しか。」

みんな「なんで向こうの冷蔵庫は作れるの?」

冷蔵庫「それはもともと向こうは製氷機がなく、自動で氷を作っていない。

こちらはそれに、冷凍室いっぱいでしょう。

だから作れない。」

製氷機「ということは、こちらの方が格上?

でも、丸いのがいいのだから格上もなにもあったもんではない。」

みんな「うーん。ちょっと待って、自動の氷を使ってもらわないと、

どちらにしても解決しないと思う。」

製氷機「丸がいいんだったら、小さい丸氷をたくさん作れるといいな。」

みんな「いいね。とてもかわいい。

でもそうなると、構造上の問題だから無理。」

製氷機「氷は可愛い飲み物だけで使用されるものではないから。

食材を冷やしたり、熱が出た時も必要だし色々。

氷が自然にいつもたくさんガサガサと出来ることはありがたいことでしょ。」

みんな「そう思う。いいよね!それぞれ役割があるということね!

でも解決方法は・・・」

製氷機「ほらあるでしょ?」

みんな「なんだろう」

製氷機「最近トントントンのノック、少なくない?」

みんな「少ない、少ない・・・」

製氷機「みんなでまだ家にいたいと思うこと。」

みんな「そうしよう。

頭が腐りそうとか、痛いなんて言ってないで、前向きに考えよう。」

今現在、

トントントンのノックは週に1~2回。

それも日に1~2回。

こんなこともあるのかと、

不思議。

おわり

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